「35条書面と37条書面の違い、即答できますか?」
宅建業法では、毎年この区別で1〜2問出ます。配点が20問ある科目の中で、確実に取れる場所です。逆に言えば、ここを落とすのは本当にもったいない。
こんにちは、ゆうです。群馬県の自動車部品メーカーで工場勤務をしながら、独学で2024年度の宅建試験に一発合格しました(自己採点45点/合格基準点37点、宅建業法は20点)。
私がこの2つを間違えなくなったのは、記載事項を丸暗記したからではありません。「誰に・いつ・何のために渡す書面なのか」を先に押さえたからです。そこが分かると、記載事項は自然と整理されます。
この記事では、その順番で解説します。
1. まず押さえる|2つの書面の役割の違い

記載事項を覚える前に、この表だけ頭に入れてください。
| 35条書面 | 37条書面 | |
|---|---|---|
| 通称 | 重要事項説明書 | 契約書面 |
| 目的 | 契約前に、判断材料を知らせる | 契約後に、合意内容を記録する |
| 渡す時期 | 契約が成立するまで | 契約が成立した後、遅滞なく |
| 渡す相手 | これから取得する人(買主・借主) | 契約の両当事者(売主と買主) |
| 説明 | 必要(宅建士が説明する) | 不要(交付のみ) |
| 宅建士の記名 | 必要 | 必要 |
| 宅建士証の提示 | 必要(説明時) | 不要 |
35条は「買う前に知らせる」、37条は「契約後に記録する」。 この性格の違いが、記載事項の違いにそのまま出ます。
国土交通省の資料にも、重要事項説明が設けられた理由がこう書かれています。
宅地建物の取引は、権利関係や取引条件が極めて複雑であり、十分に調査、確認しないまま契約を締結すると、当初予定していた利用ができなかったり、契約条件を知らなかったことにより、購入者等が不測の損害を被ることとなる ——国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」
買主が損をしないように、判断材料を先に渡す。 それが35条です。一方37条は、決まった約束を書き残すための書面です。
- 37条書面には説明義務がありません。「宅建士をして説明させなければならない」と書いてあれば誤りです
- 35条書面を渡すのは買主・借主側だけ。37条書面は売主にも渡します
- 業者間取引では、35条の説明は省略できますが、書面の交付は必要です。37条は省略できません
2. 記載事項を3つに分けて覚える

ここからが本題です。記載事項は35条だけ・両方・37条だけの3つに分けると整理できます。
35条書面と37条書面の記載事項
タブを切り替えると、どちらに載るかで分類された記載事項が表示されます。
覚え方:売買価格は37条だけ。それ以外のお金は両方。
35条だけに載るもの(契約前に知らせること)
- 登記された権利の種類・内容
- 法令上の制限(都市計画法、建築基準法、盛土規制法など)
- 私道の負担に関する事項
- 飲用水・電気・ガスの供給施設、排水施設の整備状況
- 未完成物件の完了時の形状・構造
- 住宅性能評価を受けた新築住宅であるかどうか(建物の売買・交換のみ)
- 石綿の使用調査の結果、耐震診断の内容
- 水害ハザードマップにおける所在地
- 手付金等の保全措置の概要(売買のみ)
- 契約不適合責任の履行に関する措置(保証保険など)の概要
共通点が見えるでしょうか。どれも「知っていたら買わなかったかもしれない情報」です。契約してから知らされても遅いものばかりなので、35条に集められています。
37条だけに載るもの(契約後に記録すること)
必ず書くもの(必要的記載事項)
- 当事者の氏名・住所
- 物件を特定するために必要な表示
- 代金・交換差金・借賃の額、支払時期、支払方法
- 引渡しの時期
- 移転登記の申請時期(貸借では不要)
- 既存建物のとき、構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項(売買・交換のみ)
定めがあれば書くもの(任意的記載事項)
- 天災など不可抗力による損害の負担
- 契約不適合責任の内容と、その履行に関する措置(売買・交換のみ)
- 租税公課の負担(売買・交換のみ)
こちらは「いくらで、いつ渡して、いつ登記するか」という約束の中身です。契約が成立して初めて決まることなので、35条の段階では書けません。代金の額が35条にないのは、その時点では交渉中で確定していないのが通常だからです。
契約不適合責任は要注意です。 35条にも関連する項目がありますが、内容が違います。35条は「責任の履行に関する措置(保証保険契約など)を講ずるかどうかと、その概要」。37条は「責任の内容そのものと、履行に関する措置」です。同じ言葉が出てきても、問われているものが違います。
両方に載るもの
- 代金以外に授受される金銭(手付金など)の額と目的
- 契約の解除に関する事項
- 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
- ローンのあっせんと、不成立だった場合の措置
ここは「お金とトラブルに関すること」です。契約前に知らせる必要もあり、契約後に記録する必要もあるので、両方に登場します。
ただし、書く内容が微妙に違います。
| 35条 | 37条 | |
|---|---|---|
| 代金以外の金銭 | 額・授受の目的 | 額・授受の時期・目的 |
| 位置づけ | 説明事項(必ず説明) | 任意的記載事項(定めがあれば記載) |
ローンのあっせんは、37条では売買・交換のときだけ記載します(貸借では不要)。
3. 覚え方のコツ|「売買価格は37条だけ」

3分類を丸暗記するのは大変です。私が使っていた判断基準はこれでした。
売買価格は37条だけ。それ以外のお金は両方。
ただ、私は最初ここでつまずきました。「買うかどうか決めるのに、金額こそ一番知りたいのでは?」と思ったからです。
35条は「素人が気づけないこと」だけを守る制度
考えて納得したのが、35条という制度の目的でした。
重要事項説明があるのは、取引が複雑で、知らないまま契約すると買主が不測の損害を被るからです。つまり35条は、知識のない買主・借主では気づけない情報を、プロの側から知らせるための仕組みです。
ここで価格を考えてみてください。価格は、どれだけ不動産に詳しくない人でも必ず確認します。 聞かずに契約する人はいません。わざわざ法律で守らなくても、自分で確認できる情報です。
一方で、私道の負担、都市計画法の制限、水害ハザードマップ上の位置。これらは言われなければ存在すら知りません。知らないとまずいのに、何を聞けばいいかも分からない。 だから法律が説明を義務づけています。
この非対称が、35条の記載事項を決めている軸です。
もう1つ、制度の建て付けから見た理由もあります。35条は「契約するかどうかを決めるための判断材料」、37条は「最終的に合意した契約内容の記録」という役割分担です。価格は合意して初めて確定するものなので、記録する側の37条に置かれています。
実務では、重要事項説明と契約の締結を同じ日に続けて行うことも多く、その場では価格も決まっています。ただ、法律上の位置づけとしては別の段階の書面です。試験では、この建て付けのほうで考えてください。
逆に37条で代金が必要的記載事項になるのは、契約が成立した後の書面だからです。いくらで合意したかは契約の中核で、記録しなければ書面の意味がありません。
賃貸でも同じです。 「借賃(家賃)の額」も35条の記載事項ではなく、37条だけに記載します。35条に載るのは、敷金や礼金といった「借賃以外に授受される金銭の額と目的」のほうです。ここは盲点になりやすいので、売買の代金とセットで押さえてください。
この軸を持っておくと、知らない項目が選択肢に出てきても判断できます。「素人が自分で気づけるか?」と考えて、気づけないものなら35条側です。
一番つまずいたのが、契約不適合責任の書き分け
正直に書くと、私がこの単元で一番理解に手間取ったのがここです。35条にも37条にも「契約不適合責任」という言葉が出てくるのに、書くものが違います。
| 何を書くか | |
|---|---|
| 35条 | 責任の履行に関する措置を講じるかどうか(講じる場合はその概要) |
| 37条 | 責任の内容そのものと、履行に関する措置の内容(定めがあるとき) |
35条は、措置の有無の話です。買主が「もし欠陥が見つかったとき、この業者はちゃんと対応できる備えがあるのか」を契約前に知るための項目で、保証保険に入っているかどうかといった裏づけの有無を説明します。講じない場合は「講じない」と説明します。
一方37条は、特約の中身の話です。何年間責任を負うのか、どの範囲まで負うのか、そもそも負わないのか。合意した内容をそのまま記録します。
よくある引っかけ:「責任を負わない」特約はどちらに書く?
この違いが分かっていないと落とすのが、この形です。
売主である宅建業者が、契約不適合責任を負わない旨の特約をした場合、その旨を35条書面に記載しなければならない。
答えは誤りです。
「責任を負わない」というのは責任の内容についての特約なので、35条の記載事項ではありません。35条で説明するのはあくまで「履行に関する措置を講じるかどうか」です。この特約は、37条書面に「定めがあるときはその内容」として記載します。
言葉が同じでも、35条は措置の有無、37条は特約の中身。ここを分けて覚えてください。
なお、35条でこの項目を説明するのも、37条で記載するのも、売買・交換のときだけです。貸借では出てきません。
全体の判断基準
最後に、迷ったときの判断基準はこれです。
35条=買う前に知りたい危険情報。37条=交わした約束の中身。
迷った選択肢を、どちらの性格に近いかで判断してください。「これは知らずに契約したら困るか?」と考えれば35条、「これは契約で決める話か?」と考えれば37条です。
4. 必要的記載事項と任意的記載事項

37条書面には、もう1つ覚えておきたい区別があります。
| 内容 | 例 | |
|---|---|---|
| 必要的記載事項 | 定めの有無にかかわらず必ず書く | 当事者の氏名・住所、物件の表示、代金の額・支払時期・方法、引渡し時期、移転登記の申請時期 |
| 任意的記載事項 | 定めがあるときだけ書く | 契約解除、損害賠償額の予定・違約金、天災等の損害負担、契約不適合責任の内容、租税公課の負担 |
注意したいのが「任意」という言葉です。書いても書かなくてもいい、という意味ではありません。定めがあるなら必ず書かなければならないという意味です。定めがあるのに記載しなければ、宅建業法違反になります。
ここは選択肢の言い回しで狙われます。「定めがあっても記載する必要はない」と書いてあれば誤りです。
5. 試験で狙われる引っかけパターン

過去問で繰り返し出てくる形を7つにまとめます。
① 押印はもう不要です
2022年5月18日施行の改正で、宅建士の押印義務は廃止されました。 現在は記名のみで足ります。
古い教材やネット上の解説には「記名押印」と書かれたものが残っています。最新年度版のテキストを使う理由がここです。
あわせて、相手方の承諾があれば電磁的方法による提供もできるようになりました。
② 「説明させなければならない」は37条では誤り
説明義務があるのは35条だけです。37条は交付だけで足ります。
③ 交付する相手を入れ替えてくる
35条は買主・借主側、37条は両当事者です。「37条書面を買主にのみ交付した」は誤りになります。
④ 記名するのは「専任の」宅建士ではない
記名は宅建士であれば足り、専任である必要はありません。 「専任の宅建士が記名しなければならない」は誤りです。
⑤ 記名する宅建士は、同じ人でなくてよい
35条書面に記名した宅建士と、37条書面に記名する宅建士が同一人である必要はありません。 説明した宅建士が異動や退職でいなくなっても、別の宅建士が37条書面に記名して問題ありません。
⑥ 宅建士証の提示が必要なのは35条の説明時
重要事項を説明するときは、相手からの請求がなくても宅建士証を提示しなければなりません(違反は10万円以下の過料)。
一方、37条書面の交付時は、請求されない限り提示義務はありません。 ここで注意したいのが、請求されたら提示しなければならないことです。宅建士は、取引の関係者から請求があったときは宅建士証を提示する義務があります(宅建業法22条の4)。
「37条書面の交付時に請求されたが提示しなかった」という選択肢は、業法違反で誤りです。「37条では提示不要」と丸暗記していると、この形で落とします。
⑦ 業者間取引での省略の可否
35条の説明は省略できます(書面の交付は必要)。37条は、業者間でも省略できません。
6. この表を入れたら、過去問を5問解いてください

ここまで読んで「分かった」と思っても、それだけでは点になりません。
今日のうちに、35条・37条の問題を5問続けて解いてみてください。 分野別過去問の宅建業法に、必ずまとまって入っています。
分類が頭に入った状態で解くと、正答率が一気に上がるのを体感できるはずです。そして解きながら、迷った肢には△を付けておいてください。△が集まった論点が、あなたがまだ曖昧なところです。
7. まとめ:性格の違いを押さえれば、記載事項は整理できる

- 35条は契約前に判断材料を知らせる書面。37条は契約後に合意内容を記録する書面
- 説明義務があるのは35条だけ。37条は交付のみ
- 35条は買主・借主側に交付。37条は両当事者に交付
- 記載事項は「35条だけ・両方・37条だけ」の3分類で覚える
- 売買価格は37条だけ。それ以外のお金は両方
- 価格が35条にないのは、素人でも必ず確認する情報だから。35条は「気づけないこと」を知らせる制度
- 37条の任意的記載事項は「定めがあれば必ず書く」。書かなくていい、ではない
- 契約不適合責任は、35条=履行に関する措置の概要、37条=責任の内容。言葉が似ていても中身が違う
- 貸借では記載しないものがある(移転登記の申請時期、既存建物の確認事項、ローンのあっせん、租税公課、契約不適合責任)
- 押印は2022年の改正で廃止され、現在は記名のみ
私が宅建業法で20点を取れたのは、こうした区別の軸を1つずつ作っていったからです。業法は条文がそのまま出るので、軸さえ持てば過去問を回した分だけ点になります。